40代、50代になっても
エンジニアとして手を動かし、考え続けている。
それなのに、評価や査定に差がついていく。
その違いは、本当に「技術力」だけなのでしょうか。
はじめに|50代エンジニアが「技術だけ」では評価されなくなる理由
技術があれば評価される。
その前提を、一度だけ疑ってみます。
エンジニアも40代、50代になれば会社の中ではベテラン枠に入ってくると思います。そして、自身の担当領域であれば実務に必要なスキルや経験は誰しもある程度は持ち合わせてもいます。であれば、40代、50代のエンジニアは全員が会社内で高い評価を受けて高い給与査定を得ているはずです。
しかし、実際の現場ではどうでしょうか?管理職に出世することで高給を得るという道もありますが、管理職には人数の制限枠がありますし、そもそも私はサラリーマンとしての出世コースからは見事に外れているので出世するための方法論は語れません(笑)。
とはいえ、日本企業においては年功序列制度が残りつつも、成果報酬を部分的に取り入れ拡大傾向の企業が増えてきている印象であり、実際に私が勤めている会社でも毎年の業績評価と査定によって、40代にもなると管理職ではない同期のエンジニアと年収100万円以上の差は出てきます。
ざっくり40代前半からの10年間だけでもトータル1000万円以上の収入差ですので、このお金をを投資に回すだけでバカにならない金額になりそうです。
では、その評価/査定の差はエンジニアであれば技術スキルの差でしょうか?私はそれだけではないと思います。私は某大手企業の製品設計部門で機械系エンジニアとして働いており、専門スキルとしては構造力学とFEM(有限要素法)によるシミュレーションの知識が多少あリますが、それだけでは製品開発や不具合発生時の課題は解けません。
なぜなら、ものづくり分野の課題を解くには、関連機能の専門知識およびハード、ソフト、制御、生産製造、コスト(購買調達)、法務などなど、その時々の課題によって考慮すべき項目は多岐にわたるためです。
要は、私が仕事で高査定につながる成果を出し続ける上で、私自身の技術屋としての専門スキルだけでは強力な武器にならないということです。では何が組織の中で武器になり得るのか?私の武器は各分野の専門家の知識を機能的に繋げるファシリテーションの力だと感じています。
実を言うと、私はファシリテーションというものを体系的に学んできたわけではなく、会社のファシリテーション教育を受けた際に「自分が会社組織で行なっていることは本質的にファシリテーションなんだ」と後から気づきました。
現場のファシリテーションの力が求められる理由
ものづくりに限らず会社という組織体においては各部門を束ねることが必要になってきます。そのため多くの企業では、プロジェクトや最終製品(例;電化製品そのもの、ユニット製品など)をまとめる統括部署があり、各専門部署を束ねていくわけですが、統括部門はマクロマネジメントの視点がメインになりがちで、ある意味、現場の泥臭いリアルまでには足を踏み入れることが少ない(できない)という弱みがあるように私は感じています。
したがって、各分野(ミクロ)を現場感覚を持って繋げる(Hubとなる)橋渡し的な存在が必要になってくるわけです。ある意味、マクロ且つミクロというか三遊間的な領域のマネジメントと言えるかもしれません。
本質的には上流工程の部門(例:設計部門)の管理職マネジャが適任のようにも考えられますが、どうにも中間管理職はさらに上の役員や部長からの指示命令に意識が向きがちであり、お行儀の良い報告や当たり障りのない報告、その他もろもろの予実管理業務(実はAIに取って代わりやすい)に追われて、現場に深く介入する時間的余裕も少ないのが実情ではないでしょうか。
以上のような理由から、現場で実行力のあるファシリテーションの力が重要になってくるわけですが、単に専門家を集めて「協力してください」だけでは人は動かないと考えています。では、どのようにして私が会社内、時には社外の人たちとの協働を生み出しているのか?それについて紹介していきたいと思います。
課題解決のためには「他力を集めて機能させる」
人を集めるだけでは、課題は解決しません。
ここからは現場の話です。
課題を解決するためには関連する専門スキルを借りることが欠かせないわけですが、単にメンバーを集めて「Aさんには〇〇をお願いします」「Bさんには△△をお願いします」という様に会議の場でお願いするだけで物事が進むものではありません。
やり方を間違えると、いつまで経っても思うように進まない、望まない結果に帰着することになります。では、どうすればよいのでしょうか?
具体的な話をする前に、少し精神論に聞こえるかもしれませんが「まずは最初に自分が汗をかくこと」です。ここから逃げてはいけないと私は考えています。
人は得てして楽に成果を出したいという気持ちが根底にあるのかもしれません。現に「たった毎日5分のスマホ入力で月10万円の副業収入!」というような広告をWeb上では多く見かけますし、魅力的に感じてしまう人がいるからこそ、そのような広告も存在するのではないでしょうか。
事前に私が汗をかいてきた事が相手に客観的に伝わることで(但し、恩着せがましくそれを言葉には出さないこと)それが今後協働していくメンバーからの信頼を得る前段となります。スタート時に躓かない様にするためにも、人間である以上は心構えというかハートの部分が間違っていると相手に見透かされるかもしれません。
組織レベルでクリアすべき課題を解決し一定レベルの成果を出すことは簡単なことではないです。「他力を集める=丸投げ」の意識では難しいと思います。では、具体的に私がどの様に汗をかいているのか?次の章では、私なりに実践していることをいくつかご紹介していきます。
事前準備|専門家を動かすために、私がやっていること
多くの会社には社内マニュアルや定型フォーマットなどの仕組みがあると思いますが、その手のマニュアルは新入社員や若手が最低限のアウトプットを出すための補助ツールである事が多いのではないでしょうか。
誤解を恐れずにいうとAIができる様な仕事です。一方、40代、50代のエンジニアは知識だけではなく事実に基づいた経験があるからこその+αの強みがあるはずです。その強みを事前準備すべき以下のものに反映することで差別化が生まれると考えています。
一つ目は目的やゴールを言語化/数値化することです。課題を解決できた時に得られる成果やメリットを分かりやすい数字で表現できると尚良いと思います。例えば、「この冷蔵庫の原価を500円安くすることができる」「競合メーカー製品との比較ランキングでトップレベルに入る事ができる」などです。
また500円のコストダウンのインパクトがいまいち伝わらない場合には「この製品のライフ期間で5000万円の+α利益を会社として得ることができる(10万台×500円)」という様に無視できない金額であることを伝えます。これらはほんの一例に過ぎませんが、「会社の利益」という視点を外さないことによって、社員メンバーとして向かいざるを得ない課題であることを明示します。
二つ目はゴールに向かうための地図上に存在する障壁の見える化です。これをやらずに、一足飛びにゴールまでの地図を作ろうとする行為は個人的におすすめしません。いきなりそれを行うと「分かりきったToDoリスト」になりがちな印象を持っています。
そうならない様にするために私は「自分一人でブレインストーミング」を最初に行います。メイン課題を解決する上で障壁となり得る関連課題を洗い出す事(課題バラシ)が目的です。これが”最初に自分が汗をかく”の一つであり、40代、50代のエンジニアだからこそできる作業です。
FTAやFMEA,KT法など課題に応じた分析手法を使いつつ、私のこだわりポイントは「完璧な課題バラシはできないことを承知であえて自分でやる」という点です。
これは一見非効率に思われるかもしれませんが、私はそうでもないと考えます(理由は後述)。ちなみに”自分一人で”とは書きましたが、そこに固執する必要はありません。人それぞれ環境も異なりますし、そこは臨機応変に情報収集などすれば良いと思います。
三つ目は会議に向けての資料準備です。上記の課題バラシを元にメイン課題を解決するのための提案書(又は相談書)を作る段階です。
私の場合は、①目的(実現したいこと)②解くべき各課題(考えられる障壁,やること)③日程(スケジュール)の三つをシンプルに資料にまとめます。但し、解くべき各課題については「なぜそのように考えたのか」を伝えるためのデータや補足資料も添付します。
この方法によるメリットは私自身が何を根拠にし、どこまで考察して辿り着いた提案(相談)なのかを会議メンバーに伝えるためです。そうすることによって、各部門の専門家達から更に良い意見を引き出す事ができ、課題解決のための正確な地図にブラッシュアップされていくのです。
また、事前の”一人ブレインストーミング”によって、考えれば誰でも思いつくような課題は最初から言語化されているため効率的です。会議は複数名が参加するため掛け算で時間を浪費しがちです。加えて、自分なりの仮説や思考の軸を持った状態で会議に臨めるため、議論が発散しにくくなるというメリットもあります。
自分の等身大の実力を曝け出すことはベテランだからこそ躊躇してしまう部分かもしれませんが、それなりに準備をしてきた誠意は相手にも伝わりますし、それが合意形成の促すためのファシリテーションにもプラスに作用していく様に感じています。
マインド|なぜ「忖度なし」でも高評価/高査定につながるのか
ここからは、少しマインドの話になります。
課題解決のためには他力の活用が必要であり、そのための会議や議論を成功させるには事前準備が重要であることを述べてきました。実際に”会議や議論が成功するか否かは事前準備の出来で決まる”と言ってもあながち間違いではないと私は考えています。
さて、ここまで読んでいただいた方の中には「こんな面倒臭いことやってられないよ」「こんなことしなくても結論は出るんじゃないの?」はたまた「これだけでは上手くいかないでしょ」と感じた方もいるのではないでしょうか?その気持ち、とても分かりますし、正しいとも思います。
会社組織の中での課題解決はそんな簡単なものではないですよね。なぜなら実際の現場では課題ごとの制約や事情があったり、関わる人たちの立場や性格も十人十色だからです。
よって、これまで書いてきた事前準備のコツは
課題解決のための必要条件であり
十分条件ではありません。
どちらかというと手法の類になります。私自身、事前準備をやり切っても上手くいかなかった会議は何度もありますし、現在も試行錯誤しながら課題解決にあたっています。では実際の現場で必要となる手法以外のものとは何でしょうか?
そもそも、私は「忖度」というものを本質的にはしません。少し言い方を変えると、会社や上層部の顔色をうかがったような忖度は一切せず(例;上司の顔色ばかり見て、議論が膠着した場面など)、課題やプロジェクトの最短解決にコミットする。ということになります。
そのためには「全員にいい顔をしない」、「できないものはできない、だからこう助けてほしい」という他力活用こそが、結果として組織での課題解決のスピードを最大化する武器になっていると実感していますし、場合によっては自身がファーストペンギンとなる行動をとることもあります。
これにより、自社の中では私を煙たがる人もいるかもしれませんし(きっといるはず;笑)私が出世コースから見事に外れている要因にもなっているかもしれませんが、私自身は信念を抑えてまでサラリーマンをすることが精神的に苦痛になるため現在のスタイルに帰着しているという感じです。
そのおかげでメンタルは健康ですし、査定評価は毎年高いことから同期エンジニアの中では高収入であり(実は会社規定の上限を超えています)、自分自身はそこそこ納得できています。
ではここまでの話を、いったん整理します。
まとめ|50代エンジニアが「成果を出す人」であり続けるために
ここまで、私が実践している課題解決の考え方や事前準備のポイント、そしてその背景にあるマインドについて書いてきました。振り返ると、特別な才能や派手なスキルを使っているわけではありません。
やっていることは極めて地味です。最初に自分が汗をかくこと。課題を自分なりに分解し、仮説を持ち、他力を「丸投げ」ではなく「機能する形」で使うこと。そして、最短で成果を出すために、必要以上の忖度をしないこと。
40代、50代になると、技術力そのものの差は以前ほど評価に直結しなくなります。一方で、「この人に任せれば前に進む」「面倒な状況でも逃げない」という信頼は、年齢を重ねるほど価値を持つようになります。
本記事で紹介した内容は万能ではありませんし、現場では思うようにいかないことも多々あります。それでも、何も考えずに会議に出る、誰かが何とかしてくれるのを待つ、という姿勢よりは、確実に前に進めると私は感じています。
ちなみに、サラリーマンをしていると上司から「熱意を持って仕事しろ」「工夫して効率化しろ」と言うような言葉を耳することもあると思いますが、その言葉だけで具体的な成果につながるでしょうか?
もちろん、その言葉自体は間違ってはいないと思うのですが、ある意味当たり前すぎて意味がなく、部下のモチベーションを下げるだけだど私は感じています。よって、私の場合は聞いているフリだけです。(笑)
